レシピ完全公開  ご自宅のインテリアに氷河地形模型はいかが?

 

氷河地形 千畳敷カール2000分の1模型の作り方

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 2016年の「氷河時代展」の折、中央アルプスの千畳敷カールの氷河地形模型を市民協働で作りました。我ながら、手作りとは思えない良い出来栄えのものになりましたので、その作り方を完全公開します。同じ作り方をすれば同じものが作れます。ご自宅のインテリアにもGOOD!

 

制作主旨現代と氷期の2台を並べ、その見比べをして、氷河地形(圏谷)がどのように形成されるのかが理解できるようにする。

サイズ:水平方向2000分の1、垂直方向は2倍強調されているので1000分の1。等高線1段が10m(模型では1cm)。

総製作費:1台が約15,000円前後。

製作日数と人数201512月5日(17名)・同6日(20名)・同19日(15名)・20日(6名)。

 

材料

※大型プリンターとその用紙・インク、サインペン・ハサミ・木工用ボンドなどの文具、発泡スチロールカッター・ハンマー・ハケなどの工具、花崗岩などは含まれていません。すべて参考価格です。

 

品名・仕様

単価

個数

合計

備考

A

発泡スチロール板(450×600×10mm40枚組

7,200

2

14,400

 

B

発泡スチロール用接着剤

350

1

350

 

C

ジェッソ(白色地塗り剤)

1,350

1

1,350

 

C

ジェッソ(白色地塗り剤)詰替用

920

1

920

1瓶では足りなかった

D

絵具(黄土色、こげ茶、緑色)

500

3

1,500

 

E

スプレー糊(スリーエム77)

1,800

1

1,800

石を貼り付ける

F

シリコンシーラント(クリア)330ml入り

320

6

1,920

氷河

G

ニッペ徳用ペイントうすめ液

350

1

350

氷河の表面をならす

H

キッチンタオル

300

1

300

針葉樹

I

爪楊枝

100

1

100

針葉樹の幹

J

黒フェルトペン

100

1

100

針葉樹の幹を塗る

K

カラー針金太さ1.2mm(白)

110

2

220

ダケカンバは1つに3本要る

L

ジオラマスポンジ#1204 ライトブライトグリーン

400

1

400

ダケカンバ用黄緑

M

カラー針金太さ1.2mm(黒)

110

1

110

ハイマツ用

N

ジオラマスポンジ#1210サマーグリーン

400

1

400

ハイマツ用深緑

O

白厚紙(Nagatoya最厚口A4 白25枚)

240

1

240

車両、駅、高山蝶

P

カラーコピー代

50

1

50

車両、駅、高山蝶

Q

組みひも(黒)

2,000

1

2,000

ロープウェーのロープ

R

ダイモンテントウ(カプセルQミュージアム 海洋堂)

350

2

700

 

R

ライチョウ(カプセルQミュージアム 海洋堂)

300

2

600

メルカリまたはヤフオク

S

ジオラマ用フィギュア登山者(Preiserプライザー14082

2,000

2

4,000

合計12

 

 計

 

 

31,810

 

 

作り方

1.基本地形図の作成

国土地理院地形図(2.5万分の1)の「木曽駒ケ岳」の該当部分を2000分の1になるように拡大する(12.5倍)。等高線はカッティング作業(下記)の際に見やすいように、10mごとに黒、50mごとに赤で引く。地形図には崖など、等高線が切れていることがあるが、カッティング作業する人が悩まないように、むりやりサインペンで全部、等高線をつなげる必要がある。

※氷期のほう、モレーンの右側はその後崩壊したと考えて、復元させて等高線を作った。

 

現在の地形(pdf) 氷期の地形(pdf)

 

2.基本地形図のプリントアウト

1を60cm✕90cm以上のサイズが打ち出せる大型プリンターで打ち出す。70段あるが、1枚を数段にわたって兼用するので、70段✕2台=140枚も打ち出さなくてよい(20枚×2台分ぐらいか?)。また、範囲の狭い頂上部の方はA3がプリントできるプリンターが使える(こちらも20枚×2台分ぐらい)。

 

 

3.発泡スチロール板へ等高線を転写

2を等高線沿いにハサミで切って、発泡スチロール板にサインペンでなぞって写し取る。発泡スチロール板(A)も地形図も、できるだけ無駄が出ないように考えながら且つ、カットする位置がずれないように作業する。

 

4.発泡スチロール板のカット

発泡スチロール板に写し取られた等高線沿いに、発泡スチロールカッターで切る。何段目かサインペンで必ず記す。下の写真は2480mの作業中。上から絵具を塗るから、今は何を書いても大丈夫。

 

 

5.写し取りと発泡スチロール板のカットと貼り合わせのくり返し

等高線を切って発泡スチロールに写し取る作業を、延々と70段✕2つ分くりかえす。他の人と作業がダブらないように、お互いに確認し合いながら。

 

 

6.そのつづき

最下はほぼ長方形。その上は少しカットしただけ。その上はさらに少し・・・。これを積み上げたら、だんだんV字谷が出来てきた。

 

 

7.つづき

カッティングがだいぶ複雑になってきた。

発泡スチロールカッターで整形しながら、発泡スチロール用の接着剤(B)を使って貼り合わせ、積み上げていく。

 

 

8.つづき

もうすぐ頂上へ到達。あと一息! 。

 

 

9.ジェッソ

頂上まで積み上げた発泡スチロール全体にジェッソ(C)を塗る。一晩、乾燥させる。

 

 

10.絵具を塗る

ジェッソが乾いたら、次は黄土色の絵具を塗る。普通の絵具(D)で可(そのためにジェッソを塗ったのです)。黄土色に塗って、一晩以上乾かす(その間に下記のトッピング=岩、植生などを作る)。

  

 

1.細かい石の吹き付け

屋外でハンマーで花崗岩を砕く作業をした上で、発泡スチロール模型全体にスプレー糊(E)をかけ、細かい石を貼り付ける。

 

 

12.氷河

シリコンシーラント(クリア)(F)を合計6本を使って、地形模型(氷期)に氷河を乗せる。表面が不自然に波立つので、ペイントうすめ液(G)をハケにつけて表面部分を少し溶かし、氷の「河」らしく表面を滑らかにする。

 

 

13.針葉樹を大量生産(50本)※現代のみ

 

紙はキッチン用ペーパータオル(H)を使用(ゴワゴワした感じのほうがいいので)。緑色の絵の具(D)をベタ塗り。爪楊枝(I)はフェルトペン黒(J)で黒く塗っておきます。あとは上図を参照。

 

4.ダケカンバを大量生産(100本)※現代のみ

 白のカラー針金(太さ1.2mm)(K)を4〜5cmに切って、3本を束ねて下半分をねじる。上半分の「枝」にジオラマ用ランドスポンジ(ライトブライトグリーン:#1204)(L)を木工用ボンドで貼り付ける。針金の色はほんとはピンクにすべきだった。

 

 

5.ハイマツを大量生産(50)※現代・氷期の両方

黒のカラー針金(太さ1.2mm)(M)を10cmほどに切って、ジオラマ用ランドスポンジ(サマーグリーン:#1210)(N)を木工用ボンドで貼り付ける。

 

 

6.ロープウェーの車両と駅と鉄塔の設置※現代のみ

車両と駅はイラストレーターで展開図を描き、ハガキ程度の紙(O)にカラーコピー(P)して組み立てる。

鉄塔は、誰かが持ってきたおやつの袋を閉じていた赤い「ビニタイ」をひねって突き立てた。

車両の展開図(jpeg) 駅舎はファイル探索中

 

17.植樹

植生図に基づいて"植樹"する。上から、ハイマツ→ダケカンバ→針葉樹、と標高の違いによる植生の変化を表現。

間氷期は植生図に基づけばよいが、氷期は想像で植えるしかない。ハイマツの上限はかなり下がっただろう。仮に2100mとした。

植生図「木曽駒ケ岳」gis.biodic.go.jp/trialSystem/LinkEnt/vg/detail/20/vg_20_533756LinkEnt.kml

 

18. ロープの取り付け

 ロープは太めの黒い組みヒモ(Q)を使用。

 

 

19. 高山生物と登山者を置いて完成

 ダイモンテントウ、ライチョウは海洋堂製(カプセルQ)(R)をネットで一般から購入した。登山者はドイツ製のフィギュア(S)を利用。高山蝶(ベニヒカゲ・クモマベニヒカゲ)は標本写真からカラーコピー(P)(図鑑のカラーコピーでよいだろう)。いちおう裏も作って貼り合わせた。胴体はハイマツと同じ黒の針金を使用。

 地形模型の前面、側面、背面は白のままではみっともないので、こげ茶色(C)の絵具で塗った。

 

紹介動画:

氷河時代展ギャラリートーク(2016.9.24)「植物屋の目で氷河地形模型の完成度をチェックする」

https://www.youtube.com/watch?v=skuMdGvM4O8&t=14s (横川学芸員)

 


※氷河地形模型は大阪市立自然史博物館(東住吉区長居公園)の第2展示室で常設で展示しています。

 

(野尻湖昆虫グループ連絡誌「うんころがし」125号掲載、2019年1月)