暦のひとつに二十四節気七十二候がある。もともとは中国の戦国時代(紀元前5~3世紀)に作られたものが伝わった。二十四節気は初候・次候・末候に三分割され、それらが七十二候である(24×3=72)。しかし、日本の暦とは合わないため、江戸時代前期に渋川春海によって本朝七十二候が著わされた。二十四節気は元のまま現代も使われている。立春、春分、夏至などは馴染みがある。
渋川による二十四節気「立秋」の次候(8月12日から17日ごろ)は「寒蝉鳴」とされ、どの本を開いても「ヒグラシが鳴き始める」と解釈されている。でも1ケ月遅いと思う。ヒグラシは俳句でも秋の季語とされているが、出現期はアブラゼミやクマゼミとほとんど同じで、実際は夏のセミである。
中国の元の七十二候 では「寒蟬鳴」はさらに遅い末候(8月18から22日ごろ)となっている。
「寒蝉」はヒグラシではないと思う。そもそも、日本でいうヒグラシは日本固有種だ。
中国語で調べてみると、「寒蝉」は今も中国で使われていて、ツクツクボウシ属 Meimuna のこととある。
よってツクツクボウシ(松寒蝉 Meimuna opalifera)またはコマゼミ(蒙古寒蝉 Meimuna mongolica)が有力な候補であると考えられる。
後者は日本には分布しないが、韓国ソウルに8月後半に行った折、やや深い森で盛んに鳴いていた。市街地にはいなかった。
8月中旬でもヒグラシは鳴いてはいるが、「鳴き始める」との表記をするならば、「ツクツクボウシが鳴き始める」という解釈に変更すべきだろう。
※下記はコマゼミの鳴き声。Youtube動画:窓蛍舎チャンネルより。